春から夏にかけて受け持っている阪大での授業「共生の技法」が終了…今年はオンライン授業で、30名余りの学生さんとのZoom授業&メール文通が4ヶ月続き、やり取りはA4用紙にして600ページを超えた。軽く何冊かの本になる量(笑)
メールでのやり取りは、長文のものや個人的で繊細な内容のものもあり、全員分の返事にはとんでもなく時間がかかったけれど(まだ残ってる)、感性豊かな学生さんが多くて、僕自身も言葉や表現・問いかけの修練になり、良い経験をさせてもらった。以前FBでの投稿で、この授業の内容に興味を持ってくれた方々も多かったが、今回も最後の課題の学生さんたちの回答が一つ一つ素敵で…ここで紹介できないのが残念に思う。
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◆最後の課題、こんな感じ。
①共生社会・多文化共生世界を実現するためには、どんなことが必要だと、あなたは考えますか?幾つ挙げてもらっても構いませんので、現時点で思いつくアイディアを聞かせて下さい。
②共生社会・多文化共生世界の実現を阻むものは、どんなことだと、あなたは考えますか?幾つ挙げてもらっても構いませんので、現時点でのあなたの意見を聞かせて下さい。
③今のあなたが、「生まれたばかりのあなた」の養育を任されたら…あなたは、自分自身をどのように育てたいと考えますか?
④今のあなたが「生まれたばかりの両親」の養育を任されたら…あなたは、自分の両親をどんな風に育てたいと考えますか?
⑤あなたが「今の自分がイメージする、最高の状態」にあるならば、あなたは社会で・周囲の人間関係の中で、どのような「はたらき」を担うと考えますか?
⑥あなたが現在「そうなれないでいる」「そうなれないような気がする」ならば、それは何故だと考えますか?あなたが「そうなる」ことを阻んでいるものがあるとしたら、それは何でしょう?
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…特に④かな。20代の若い人々が、どんな風に親の世代を眺め、社会の大人を眺め、そしてどんな風に大人に疑問を持ち、そして愛情を抱いてくれているのか、ホントは皆さんに知って欲しい。
⑤や⑥からは、今の社会や教育が若い人の心の内に何を引き起こしているのかが浮かび上がって来る。授業では、「思い込みの解除」や「自分育て」など、幾つかのテーマでいろいろな話をしているので、質問はそれらを踏まえたものになっている。
もちろん、この授業…「ヒトは何故うたい、おどるのか」という副題がついているので、音楽や踊りに関しても色んな話をしている。でもこの国に暮らす大半の人は、音楽と言えば商業音楽や教育を通したイメージしか持っていないし、音楽という言葉についても(たとえば、いつから使われているか・元々この字を何と読んでいたのか・ミュージックと音楽はどう違うのか・なぜ音を「おと」というのか・楽と「たのしい」はどう違うのか…等など)、今の教育は根元のところを何も教えてないから、音楽という言葉自体が指す意味も小さく狭くなっているし、社会で共有されてる固定観念はかなりある。
なので、僕のやることはまず「信念体系を、ひっくり返す」作業。思い込みを解除するためには、まず思い込みに気付いてもらわなくちゃけない。でもやはり思い込みは「それが思い込みと気付きにくいからこそ、思い込み」とも言える(笑)なので多少、学生さんの顔からハテナがいっぱい飛び出すのが見える中、話さなくちゃいけないこともある。
Zoom授業に先立って、自分を観察してもらうためのアンケートや、映像を使った動画鑑賞会も行った。今年紹介した映像は、エストニアの「歌を共有する社会」、アイルランド移民の歌、チリの新しい民衆歌、アルメニアのダンス・ムーブメント、パラグアイのスラムで生まれた廃品楽器オーケストラ、ロシアの「古い歌に目覚めた若者たち」、口笛で会話する世界各地の村、ウイグルの伝統的な祭・風習、ナーガ族の仕事歌、タゴールの詩と歌の文化、旧ユーゴ全域で歌われるロマ(ジプシー)の歌、グルジェフのムーブメント、などなど…。
頭が柔らかい人は、そこからいっぱい感じ取ろうとして半ば言葉を失っていくし、頭が固い人は、今の自分が持ち得ている情報と思い込みで、分析を試み言葉を並べようとする。初めて出会うものに対して、自分の中で何が起こっているか、気が付いている人は、そういない。
今年も、感じることや知ること、考えることや表すこと、分かるということや信じるという言葉の意味、それらが表そうとしている意識のはたらきについて、ビジュアル的に解説しながら、僕は僕の方で、学生さんたちの世代が何を求めているのか、時代がこれからどういう方向に向かおうとしているのかを感じ取るための時間にもなった。
個人的には、最後の課題なのに質問書いて送ってくる人や、どこに行けば話が聞けるのか尋ねてくる人や、来年も受講したいという人たちや、またメールしますとシレッと書いてくる人がいたりするのが、ちょっと嬉しかった。みんな、いい人生を送れますように。