タローさんちの、えんがわ

「音楽をする」って、 「音楽的に生きる」ってこと

3月から4月にかけてのご報告

このところ、FBでは近況をアップしていたものの、ブログの方にはアップできていなかった…ので、まずは早足で3月~4月のご報告。

 

3月10日に開催された「大地のめぐみを、味わう旅」は、昨年夏のルーマニアトランシルヴァニアへの旅をセッティングしてくれたダニエル氏とのコラボレーション企画だった。

この企画は、ルーマニアのワイン文化(それをとりまく歴史や文化、自然環境や農業、人々の暮らし)を紹介し6種類のワインを味わって頂くのと同時に、ルーマニアの音楽も楽しんで頂こうという贅沢な催しだった。

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旅の最後に訪れたサハテニ・ワイナリーの人々と

このブログでも詳しく報告するつもりではいるけれど…昨年のトランシルバニアの旅は驚きと発見に満ちた旅だった。伝統的に農薬を嫌ってきたこの地域の人々は、食文化に対して意識が高く、長い年月にわたって自然環境を守ってきたことが伺えた。地平線の向こうまで広がる畑には宝石のような何種類もの葡萄が実り、プルーンやリンゴの木々からは果実の豊かな香りが漂っていた。愛情を受けて育った馬や羊たち、職人気質でチャーミングな農園の人々、誇り高き羊飼いたち、アカシヤの木々とその傍らに並ぶ養蜂家たちの蜂蜜ワゴンの群…国家の恩恵を受けずに自給自足の暮らしを続けてきた奥地の村の暮らしや、バイオリンの材となる木が今なお生い茂る森など、多くの人に知って欲しいことが、僕の中には溜まっていた。

 

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終演後、ダニエル氏と

そんな諸々のことを少しでも多くの人にシェアできればと企画したこの催し…ダニエル氏の話はとても興味深いものだったし、試飲コーナーでふるまわれた6種類のワインはどれも風土や歴史を感じさせる素晴らしいものだったので、満席になった会場の皆さんには本当に楽しんで頂けたように思う。もちろんルーマニア音楽ライブも大変盛り上がった。音楽は、人間だけから生み出されている訳ではなく、また人間の中だけで育まれてきた訳ではないことが改めて分かった。

 

また、会場となった大阪・本町の周(あまね)は、僕が音楽活動を始めた頃から一緒に仕事をさせて頂いてきた音楽事務所の方がオープンしたお店でもあったので、この日は色んな意味で特別な日になった。今年は7月の終わりに、再び東京でこの催しが実現することになりそう。関東にお住まいの方がおられたら、是非お越し頂きたい…。

 

 
続いて3月18日は、地元の保育園の卒園企画でのコンサート。うちに向かいにある保育園なので、子供たちも顔見知りが多く、家族ぐるみで親しくさせて頂いているご家庭も少なくない。この保育園でも何度か演奏させて頂いているが、こうして地元の人々や子供たちの前で演奏させて頂く機会は本当に宝物だと思っている。
 
 
3月22日には、東京神楽坂にあるメディカルレイキ・アカデミーでの講演。昨年11月にさせて頂いた講演会では話が「ノッてしまい」、なんと話題がテーマに行き着くまでに公演が終わってしまったので、今回は出来るだけテーマに即して話すことに…。
 
前回と同じく、演奏を交えながらの講演なんだけれど、話の内容に興味を持って集まって下さる方が多いし、こちらもそういう方々に話したいことはいっぱいあるので、いつも時間切れになってしまう感はある。この辺りはもう少し、こういう機会に関して「こなれたい」なぁと感じている。もちろん、僕の性格上そうなってしまうことは不可避なのかもしれないが。
 

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この日は会場を真っ暗闇にしてフヤラを聴いて頂いた

 23日は四ツ谷メビウスで、昨年11月以来の南米音楽コンサート。今回は、新たに出会えた人や、ようやく出会えた人、そして久しぶりに会えた人も多く、個人的にとても嬉しい日になった。これまで南米音楽を通じて人と出会っていくということが(こういう楽器をやっている人間としては極端に)少なかったので、こうして南米音楽をメインにしたコンサートをして、愛好者や愛聴者、演奏家の方々と知り合っていくというのは本当に新鮮な感覚がする。

 

ギターラの寺澤氏とは二度目のステージなので、つかめてきたことが多い。これからもっと楽しくなるだろう。寺澤氏は爪ではなく、指で弾くスタイルなので、ギター奏者の中でも、音色に特に個性が光るタイプ。だからこちらも知らず知らずのうちに、普段と違う吹き方をしている。

 

このところ、新しい笛にチャレンジする時間を多めにとっていたので、ケーナを演奏する時間は少なかったけれど、やはり自分にとっては古巣的音楽。鳴らした瞬間に、スイッチは入る。僕を音楽の世界に引き込んでくれたのは、南米の音楽文化だったのだなぁとつくづく実感した。

 

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東京四ツ谷メビウスにて、ケーナのライブ

 終演後、あれこれを撤収していたら、熱心に聞いてくれていたバーテンダーの女の子が「あのう…アルバム買わせて頂いてもいいでしょうか?」と声をかけて来てくれた。何だか嬉しくて「何か音楽やってるんですか?」と尋ねると、遠慮がちに「はい…あ、ロックっす」と言っていたのが可愛かった(笑)

 

本が付いた「空のささやき、鳥のうた」を買ってくれたんだけど、その中に収録された「霜が降りた道」をこの夜演奏したから、それを気に入ってくれてのことだった。およそロックとは逆方向の音楽かも知れないけれど…こういうのが一番、嬉しいのかも知れない。

 

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頂いた古竹で作ったアルメニアのシュヴィなど…

4月の頭には、ちょっとした仕事で太秦の撮影所に。ウードの常味裕司氏やダンサーの素蘭さん、ダラブッカの永田充君と久しぶりにご一緒したんだけど、やはりこういうサウンドは好きだなぁと思った。バイオリンの土屋玲子さんのユニットでの演奏…どういう仕事だったのかはまだ公表できないけれど、そのうちに。

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舞踏家で映画監督の岩名氏と

さて同じ4月の頭には、フランス・ノルマンディー在住舞踏家・映画監督の岩名雅記氏の大阪での新作上映の最終日に駆けつけた。

 

FB上で誰かとのやり取りの中で、とても共鳴する文章を書いている人が岩名さんだった。面白そうとやり取りしているうちに、つながった。メールでのやり取りはしていたが、直接お会いしたのは今回が始めてだった。

実際お会いすると、岩名氏は僕の好きな発酵系の人間…とりわけ燻製チーズのような、香り立つ方だった。今の世の中は何でも「溜め込むこと」が良くない事のように言うが、僕はアレコレ「溜め込める人」が好きだ。中でも、人知れず発酵を続け、たまり醤油の如く熟成し青カビチーズの如く異臭を放っている人は「堪らない」。奥底に、他人が知り得ない時の集積・念の集積があるからだ。
それにしても岩名さんは、何に「あぶられて」来たのか。長い時間、人知れず何かに「あぶられ続けてきた」人でないと、このような香りは放てない。

上映が終わってからも喫茶店でご一緒させて頂き、色々な話を楽しんだ。映画のことやこの日の出来事は、そのうちブログに書けたらなとは思っている。

 

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ついにスタート、京北での「踊って旅する、世界の国々」ダンス講習会

そしてこの4月からついにスタートしたのが、「踊って旅する、世界の国々!」。僕が住む京都の北に位置する京北で、9月の秋分の日に開催される「ツクル森」というイベントと連動する形で定期的に開催されていくことになった、フォークダンス講習会だ。

 

日本人は日常的に踊らない。日常的に歌う人も少ない。音楽やその他の身体的表現を、一部の特殊な人々がやるものだと思い込んでいたり、習ったりしないとできないことだと思い込んでいたり、そういった表現を娯楽やサービス業のように捉えたりしている。

 

世界各地に「輪になって、手をつなぐ踊り」があり、日常的に地域の人々が集まって踊ったりする文化があるのに、日本には手をつなぐ踊りがほぼない。住んでいる地域の人々が一緒に踊るといった機会も、一年のうち盆など限られた日だけだ。これは10代の頃からずっと不思議だった。

 

何故そうなのか?は諸説あるが…それよりも、実際にこのような文化に親しみ、楽しんでみる方がいい。世界各地では、このような踊りの文化を通じて互いの関係を深めたり地域の結束力を高めてきた経緯がある。お互いに触れる機会が少なくなっているこの社会で、手をつなぎ輪になり、身体をシンクロさせ時間を共有する、この輪踊りという装置を加えたら、僕たちが住んでいる地域でどういうことが起こって来るのか。

 

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大人が作る輪に子供たちが飛び込み、周りを走り回って、踊りがひろがっていく

初回のこの日は、アルバニアの曲やルーマニアの曲、ルーマニア国内のハンガリー系チャンゴーの人々の音楽や、アルメニアの音楽をとりあげた。普段接することのないような地域の人々の感性や暮らしに触れてもらえる機会にもなればいいなと思う。

 

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ワーク・ショップ終了後…この後、ミニコンサートと交流会が行われた

この子供たちが大人になる頃に、人が集まったら、そして何かの式や催しがあったら、CDなどではなく生演奏で音楽が奏でられ、自然に踊りが始まり、誰もが躊躇なく踊りの輪に入り、時間を共有できるような地域社会になればいいなぁ。

 

次回は、7月6日、8月3日。関西圏におられる方は是非。